そして僕を手放さずにいて

アイドルオタクのときめき備忘録

春松竹とさくらラテ

唐突だが、現場のときに食べる食事がとても好きだ。

どのお酒の場よりも、現場の後に飲むお酒が一番おいしい。

オタク同士だと話題がハッピーでピースフルで結論が全て「尊い」と「好き」に集結するのもポジティブで後味がよくて最高だ。

私は数年前までエイターだったこともあり、かなり高頻度で現場後に鳥貴族にお邪魔していて、現場後のサングリアと焼き鳥は格別だといつも思っている。

 

さて、気づいたら片想い…ではなく三月になった。

このどこか浮足だった、けれど少し寂しさを纏った空気は三月特有のもので、もれなく私も少し寂しくなってしまう。そしてこの時期が近づくと決まってある知らせが来る。スターバックスからの、さくらシリーズの発売情報。ある時からはたと飲まなくなった。

 

さくらラテをよく現場前に飲んでいた。現場前独特の緊張感から湧かない食欲や、まだ少し肌寒いことから、昼食代わりに大阪松竹座近くのスターバックスでよく購入していた。言わずもがな春松竹のシーズンで、当時大学生だった私は休日のほとんどの時間を難波で過ごしていた。言ってしまえばチケットが手元にある日が全部休日みたいなものだった。行けば誰かが居て、単純に楽しくて、三月に寂しさなんて感じない時期だった。

 

私が大学を卒業して、地元の田舎にこもり、絶賛人生に迷走していた年の春松竹で、担当が卒業した。一般人とか関係なく、ブログは名前が残るからとか関係なく、しっかりと記すけれど、あのとき、私の担当であった金内柊真は関西ジュニアから卒業をした。

 

自分は何をしているんだと思った。

就活で家族と揉め、ただ流されて、なんとなく実家に戻ることになり、けれどもともと馴染めていなかった地元なのでひたすら窮屈で、どう地元を離れるかしか考えていなかった時期に、私の担当は退所した。

アルバイトで品出しをしながら涙をこらえ、帰りに食事をしながら長い長い最後のファンレターを書いた。初めてファンレターを書いた相手だった。それまであった彼への感謝を「最後だから」と照れずに全て書いた。いや、照れたけど書いた。

書き終わったファンレターをその足で郵便局へ持参し、速達で送った。その帰りにスターバックスがあった。けれどさくらシリーズはもうなかった。私の春はもうどこにもなかった。

 

今年も変わらずさくらシリーズが発表され、もはや今は新シリーズの展開が始まっている。あの時以来、飲むと悲しくなるからと大好きなさくらラテを飲めずにいた。

でも先日ふと思い立ち、仕事帰りにスタバに寄り道を敢行、実に四年ぶりに口にした。相変わらずおいしくて、華やかで、でも泣いてしまった。大通りとはいえ夜道を、スタバ片手に泣きながら歩いて帰った。「ああ、あの時は楽しかったなあ」といろいろ思い返しながら、最後の一口を飲み終えるときに、「ああ、私大好きだったんだなあ」と思った。ここまで来るのはすごく長かったけれど、きっと私はようやく受け入れられたんだと思う。ようやく終わりにできたんだと思う。

 

「私、今も最高に幸せだけど、あのころだって最高に幸せだったんだよ」と、ようやくそれぞれの感情を同時に認められるようになった気がする。

 

思い出って五感に寄り添っているもので、ふとしたときに起因となって呼び覚まされるもので、味覚もそのひとつで。きっとこれから先いろいろなものをいろいろな人と食べたり飲んだりすると思うけれど、現場の思い出の味は一つ残らずおいしくて楽しいものになればいいなあ。これからどんなおいしいものを口にしながら、大好きな人たちから幸せをもらうのかと思うとわくわくしてくる。春はまだまだこれからで、私の大好きな人たちは今、ステージに立ってくれている。私は今、最高に幸せだ。